「デザイン思考的アプローチ」について検索サイト等で調べてみると「デザイナーがデザインを行う過程で用いる特有の認知的活動を指す言葉」といった説明がウィキペディア等で見受けられます。しかし、デザイナーではない人にとってこの説明は、理解できるようで理解できていない可能性があります。
「デザイン思考」の詳細は詳しく説明された様々な書籍等がありますので、定義づけや具体的な手法についてはそれらにお任せするとして、ここでは私なりに課題解決におけるデザイン思考について考えてみたいと思います。
デザイン思考とクリエイティブな発想
「デザイン思考」とは、「コンサルタントに依頼された経営上の課題に対して、課題そのものの範囲だけでなくさらにその周囲の範囲における課題を加味して課題そのものを再考して本質的な問題点をクリエイティブな発想で発見すること、そしてその問題点を解決するためのソリューションをクリエイティブな発想で導き出すこと」ことだと私は考えます。もちろん、そのソリューションの導出にあたっては、課題が置かれている環境についての一般的な知識や、コンサルティング会社やMBA教育で学ぶような一連のコンサルティング手法等を必要に応じて使います。
ここで「クリエイティブな発想」という部分がまだ明瞭でないかもしれません。私はかつてBooz Allen Hamiltonという米国の戦略コンサルティング会社でコンサルタントをしていたことがありますが、このときにコンサルタントは「物事をできるだけ細かく分解し、必要な要素を時系列を考慮しつつ組み合わせて行き、ソリューションを構築する。その際に、雑巾を何度も何度も絞るように脳みそを絞り出し、出てきたエキスをそのソリューションに加える。」といったプロセスを行うことで、クライアントの「目から鱗が落ちる」ようなソリューションが完成し、クライアントが高いフィーを支払ってくれるものだと説明を受けました。その先輩からはよく「だからどうした?So what?」と圧迫されたものです。
目的意識を持ってバラバラにして組み合わせるプロセスを繰り返す
この何度も何度も脳みそを絞るというのは、トヨタの「なぜ」を5回繰り返すというものに相当する行為で、実は、いろいろなところで行われている手法で特別新しいものではないのだと思います。ただ、その「何度も何度も考える」という行為が面倒だったり、相手に嫌がられたりするものなので、好んで行う人が少ないのかもしれません。
私はデザイナーではありませんが、事象を分解してそれを考えながら組み立てる行為や、そこで絞り倒したエキスを「クリエイティブな発想」で絶妙な部分に加味することで、斬新さや感動をもたらす作品に相当するソリューションを構築するような部分がデザイナーと共通するのかもしれません。
もちろん「デザイン思考」的なアプローチ以外にも、現状を分析して問題を把握し、仮説を検証して解決策に結びつけるという従来から有名な「仮説思考」的なアプローチが有効な問題解決手段になるときも多いと思います。コンサルティングを行う時間・予算・協力者等のコンサルティング環境に応じて、コンサルタントが自ら熟考しながらそれらを活用していくというベタな行動が現実的なところなのかもしれません。いずれの方法による場合でもコンサルタントの努力だけでは成功せず、コンサルティングを依頼するクライアント側の強い意思と関係者等の積極的な協力が不可欠なことは確かです。